胆嚢破裂

胆嚢破裂とは、胆嚢という胆汁を貯めている袋が炎症などによって破けてしまう病気のことです。

症例は11歳、4kgほどのわんちゃんです。

急にご飯を食べなくなり、活動性の低下もみられたため当院を受診されました。

一般身体検査では発熱、腹部痛、循環の低下などがみられました。

血液検査では炎症の数値の高値と肝酵素の軽度上昇がみられ、腹部超音波検査からは胆嚢の異常、胃腸の異常、上腹部の炎症が疑われました。

この段階ではただの胃腸炎か、胆嚢炎や胆管肝炎などの肝胆道系の病気かを鑑別することは困難でした。

皮下補液や抗生物質の投与で発熱はなくなり、食欲も改善傾向でしたが、炎症の数値が改善しないため、再度腹部超音波検査を実施しました。

この際、胆嚢の正常な構造が確認できず、上腹部の炎症の改善もみられなかったため、胆嚢破裂を疑診しました。

胆嚢破裂の診断にはCT検査が有効なことがあります。今回は、2次診療施設に紹介し、CT検査を実施してもらいました。

その結果、胆嚢破裂が確認されました。

本人の一般状態はかなり改善していましたが、胆汁性腹膜炎によりいつ体調の悪化を起こすか分かりませんでした。

飼い主様に手術を提案し、同意が得られましたので、当院にて手術を行いました。

手術は「胆嚢切除」「肝生検」「腹腔洗浄」を行いました。

破裂した胆嚢が周囲の脂肪や隣接する肝臓と強く癒着していたので、かなり大変な手術となりましたが、なんとか無事に終えることができました。

その後、順調に回復してくれて、術後4日目で退院となりました。

炎症の数値も正常に戻り、今は定期検診を続けています。

通常の胆嚢破裂では、胆嚢内容物が腹腔内へ漏出することで胆汁性腹膜炎を起こすことが多いです。

今回、幸いにも胆嚢内容物が腹腔内に漏出する前に周囲の脂肪などが癒着したことで、腹膜炎が限局していたのだと考えられます。

診断には時間がかかりましたが、一般状態がある程度改善してから手術ができたので、術後の回復は順調でした。

胆嚢の病気では最終的に手術が必要なケース(胆嚢粘液嚢腫や重度胆嚢炎など)がしばしばあります。

ご心配な方は一度ご相談下さい。

獣医師 藤田