肝外胆管閉塞
肝外胆管閉塞に対して、胆嚢・十二指腸切開術を用いて閉塞を解除した症例のご紹介です。
症例は15歳で高齢のミニチュア・ダックスフントの男の子です。
過去に他の病院で胆嚢の手術歴があり、
初診時には重度の黄疸(全身の皮膚や粘膜が黄色くなること)と食欲不振に陥っていました。

胆嚢とは、肝臓の隙間に張り付くように存在する袋状の組織のことで、
肝臓で作られた胆汁(主に脂肪の消化と吸収を助ける役割を担う液体)を内部に貯めています。
胆嚢と肝臓は総肝管、胆嚢管といった管で繋がっており、
その管は合流して最終的に総胆管という管になり十二指腸に開口します。(左図参照)


今回の症例は総胆管がちょうど十二指腸に開口する出口のところに胆石が詰まってしまい、胆汁を排泄することができなくなってしまいました。(左の超音波検査画像及び上図参照)
詰まる場所によって呼称は異なりますが、この場合は肝外胆管閉塞に分類され、総胆管の物理的な閉塞を解除することが急務となります。
一般的な外科手術による治療方法としては胆嚢摘出術、胆嚢・腸管吻合術などが挙げられます。
今回は腹腔内臓器の癒着が激しく胆嚢の脆弱性も著しかったため、胆嚢と十二指腸それぞれに小さな切開創を作り、胆汁の吸引や総胆管内を生理食塩水で灌流することで閉塞を解除しました。(↓は胆嚢と十二指腸乳頭にカテーテルを通して吸引・灌流を行っている術中の写真です)

術後も集中的な管理は必要でしたが、黄疸は順調に改善して1週間で退院することができました。現在では抜糸も終えて、定期的な診察とお薬による内科療法でコントロールしています。継続的な治療やモニタリングは欠かすことはできませんが元気に過ごしてくれています。
(↓動画 飼い主様より提供 公園で遊ぶ様子)
内科療法が奏功しない肝外胆管閉塞に対して、胆嚢・十二指腸切開術を用いて閉塞を解除した一例をご紹介しました。
最良の選択はその時の様々な条件によって変わりますが、結果として、最小限の臓器侵襲で最大限の治療効果を得ることができたと考えています。
本症例のような肝臓・胆嚢疾患は病態がかなり悪化するまで症状が出にくいことが多いです。定期的な健康診断を行い、些細な変化に気がつけるようにしたいですね。
ご心配な点や何か気になることがあれば、まずは気軽にご相談ください。
獣医師 川﨑亮