深部感染症 / 深在性膿皮症

今回は、長年患っている皮膚病(膿皮症)から深部感染を起こしてしまい、全身状態まで悪化してしまった子をご紹介します。

今回は画像の「色合い」が重要になりますので、ほとんど加工をしておりません

リアルな写真が苦手な方はご注意ください。

症例は14歳の柴さんです。

突然、立てない、歩けない、ご飯を食べない、ということで来院されました。

身体検査では体温が40.4℃、右踵部の皮膚が腫れて、熱感もあり、痛みも軽度にみられました。院内では歩行は何とか可能でした。

血液検査では白血球と炎症マーカー(CRP)の上昇がみられ、腹部超音波検査で異常はみられませんでした。

各種検査結果を総合すると、右踵付近の皮膚での感染症とそれに伴う発熱、一般状態の低下を疑いました。

抗生物質による治療を開始しました。

数日後に排膿したとのことで来院されました。

腫れていた右踵部付近の皮膚に穴が開き排膿しており、皮膚は黒く変色している領域もありました。

皮膚にたまった膿を細菌培養検査用に採取した後に、排膿部を十分に洗浄し、余分な組織を可能な限り取り除きました。

排膿するまでは食欲も十分ではなかったとのことでしたが、排膿してからは食欲や元気は順調に改善してくれました。

排膿部の皮膚の色は悪かったですが、幸い肉芽の色はそれほど悪くありませんでした。

治療のために短期集中的な洗浄と包帯交換を行いました。

感染創からは排液(排膿)がたくさん出てくるため、排液が落ち着くまではこまめな包帯交換が必要となります。

排膿した日とその翌日は、病院で排膿部の洗浄および包帯交換を行いました。

しかしながら毎日通院するのは難しいとのことでしたので、数日毎の通院治療としました。

ご自宅では1日3回以上の包帯交換と、可能な限りでの創部の洗浄をお願いしました。

創は来院される度に順調に良化していきました。

排膿してから8日でかなり良好な状態まで改善しました。

本人の一般状態も良好でした。

今回は膿の培養検査からブドウ球菌が検出されました。

ブドウ球菌は皮膚にいる常在菌です。ブドウ球菌が増えてしまい、膿皮症(表在性膿皮症)になっていたものが、深部感染(深在性膿皮症)し、悪化したと考えています。

一般状態が落ちるまでの皮膚の感染症はそれほど多くはありませんが、適切な創傷管理と抗生物質の使用(必要ないこともある)で良くなります。

咬傷や裂傷などに関しても同様な知識に基づき治療していきます。

様々な「傷(創)」でお困りの際はお気軽にご相談ください。

副院長 藤田

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